実話映画『アメリカンスナイパー』の感想|究極の葛藤と選択!
2015/02/24
アメリカン・スナイパー
94点/100点
監督
クリント・イーストウッド
キャスト
ブラッドリー・クーパー(クリス・カイル)
シエナ・ミラー(タヤ・カイル)
ルーク・グライムス(マーク・リー)
ジェイク・マクドーマン(ビグルス)
ケヴィン・レイス(ドーバー)
コリー・ハードリクト(“D”)
ナヴィド・ネガーバン(アル=オボーディ師)
カイル・ガルナー
見て来た感想。※ネタバレ少しあります
早速見て来ました!!
イーストウッド監督のファンなのでパンフレットも買ってしまった。
パンフの中身もカッコいいので見た方は買った方が良いですよ。
以下、感想書きます!
イラクの4回の遠征で160人の敵を射殺した伝説のスナイパー『クリス・カイル』を描く実話戦争映画。
彼の著『ネイビー・シールズ最強の狙撃手』をクリント・イーストウッドが映画化し、ただの戦争映画とはひと味違う考えさせられる素晴らしい映画に仕上がっています。
『プラトーン』、『地獄の黙示録』、『プライベートライアン』、『ブラックホークダウン』が戦争をありのままに描く戦争映画だとしたら、これは実際に戦争を経験した”人と家族”を良く描いている。
イラク戦争やこれからあり得るだろうイスラム国との戦争を肯定している訳でもなく(その様に見える一コマもある)が、ただただ大量に人が死んで行く映画とは一戦を画し、映画の中で死んだ仲間の一人一人とその人の後ろにあるバックグラウンドに共感せず、涙せずにはいられない。
コレだからイーストウッドの映画は高く評価されるのである。
今年で、85歳になる監督だがこれからも沢山の心に響く映画を作って行ってほしい
映画の内容
アメリカ軍と戦車に近づくイラク人の少年とその母親らしき女性。
敵かただの市民か分からない極限の状況の中でクリスは判断を迫られる。
序盤のこのシーンから一気に引き込まれる!
戦場のスナイパーに焦点を当てた今回のイーストウッドの映画は、
戦争をありのままを描くというよりも、人物描写を描いていた。
どんどん人を殺していくが、自分自身も戦争というカルマに心が蝕まれていく。
戦争へ行く夫とそれを支えるシエナ・ミラー演じる(タヤ・カイル)。
前半のシールズの訓練のシーンは『フルメタルジャケット』を、
後半のカイルの揺れ動く気持ちは『ハートロッカー』を彷彿とさせる。
戦争は究極の葛藤
イラクの戦争では、戦地へ行って人を殺し、故郷へ戻って来て家族と普通に生活する。
この両極端を行き来するカイルの心の葛藤を上手く表現している。
イーストウッド自信も『戦争は究極の葛藤』と述べており、前半の子供を殺すシーン、
後半のRPGを手に取る子供の場面。
この映画にはどれをとっても息つく暇も無い。
野蛮野郎
近年、日本人がイスラム国に捕まって殺害された事件があったので野蛮野郎という言葉に共感を覚えてしまった。クリスがイラクの兵士を野蛮野郎と表現するにも、無理は無かったと思う。
映画の中でもイラク兵がイラク人の子供をドリルで殺害するシーンや、蛮行が目立つ所もある。
戦争はどこまでも人間を残酷にさせるのだ。
クリスから描く戦争
クリスの仲間のビグルスは『帰還したら彼女にプロポーズをする』と言っていたが、
その次の瞬間には敵のスナイパーに撃ち抜かれ、帰還後に全盲になってしまう。
やられて行く仲間達。
最後のシーンで1900メートルも離れた宿敵のスナイパー(ムスタファ)を撃つ事に成功するが、
映画のなかで彼にも家族と子供がいて敵もカイルと同じで、仲間を守るために戦う一人の父親なんだと分かる。
一瞬のカタルシスはあるかもしれないが、深く考えるとやり場の無い気持ちにさせられる。
伝説のスナイパークリスと許されざる者の孤高の殺し屋マニーとの共通点
イーストウッド監督•主演の映画『許されざる者』の主人公のマニーもラストでリトルビルを痛快に撃破するシーンがあるが、結局は孤独の殺し屋で人を殺した分その呪いが一生ついてまわるのである。
快楽殺人は別として、普通の人間が人を殺す事に何も感じないなんて嘘だ。今回の映画『アメリカンスナイパー』では国の為に人を殺す、仲間を守る為に殺す。何かを理由に殺人を肯定している。確かに、自分を正当化しないと戦場で人を殺し普通の生活に戻った後も生活できないんだと感じた。
そういう苦悩が両作品の主人公にはあると思う。
まとめ
大迫力の戦闘シーンを見せるのが目的の作品では他にいくらでもあるが、今回の『アメリカンスナイパー』は、クーパー演じる主人公の4度にわたるイラク戦での体験が回数を重ねるごとに変化して行く様を実にリアルに分かり易く描いている。
当初はスティーブン・スピルバーグが監督をするはずでしたが中止になりイーストウッドが手がけました。イーストウッドが監督していなければこんな人間を描いた良い映画にはならなかったと思うし、「ディア・ハンター」の暗い余韻とはまた別のイーストウッドなりのメッセージ映画としてこれからの映画史に残るべきアメリカ映画には違いないと思いました。
実話をもとにした戦争映画で『ローンサバイバー』もおすすめです!
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